日本で開始した相続にフランス資産がある場合― 不動産・銀行口座・生命保険の実務的な特定方法 ―
- LPA Administrative Scrivener Office

- 2月12日
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日本で相続が開始した後、被相続人がフランスにも資産を保有していた可能性が判明することがあります。国際結婚、海外駐在、フランスでの投資経験などがある場合、この問題は決して例外ではありません。
実務上の最大の課題は、「フランスに何があるのか」を制度に沿って正確に把握することです。フランスには単一の財産台帳は存在しませんが、不動産・銀行口座・生命保険については、それぞれ明確な登録制度が設けられています。
1. フランス不動産の確認方法
フランスの不動産に関する権利関係は、Service de publicité foncière(不動産登記局)に公示されています。売買、贈与、相続、抵当権設定などの権利変動はすべてここに登録されます。
登記は物件単位で管理されていますが、相続手続においては、フランスの公証人(Notaire)が被相続人の氏名、生年月日、出生地などの情報をもとに、税務当局および登記情報を通じた調査を行います。
実務では、不動産所在地の手がかりがあると調査が迅速になります。固定資産税(taxe foncière)の通知書、フランス税務当局からの書簡、管理会社からの請求書、過去の売買契約書などは重要な資料です。
特に注意すべきはSCI(Société Civile Immobilière)です。SCIは不動産を保有するための民事会社であり、被相続人が保有しているのは不動産そのものではなく会社持分です。この場合、不動産登記を確認しても個人名義の物件は表示されません。SCI持分は商業登記(Registre du commerce et des sociétés)および企業登録情報を通じて確認する必要があります。
2.フランスの銀行口座調査 ― FICOBA
フランスにはFICOBA(Fichier des Comptes Bancaires)という銀行口座登録ファイルがあります。これはフランス国内で開設されたすべての銀行口座を登録する制度です。
登録されるのは、銀行名、支店、口座名義人、口座の種類と番号、開設日・閉鎖日といった情報であり、残高は含まれません。しかし、存在自体を把握できる点で極めて重要です。
相続手続では、公証人がFICOBAに照会し、口座の存在を特定します。
口座が特定されると、各金融機関に対して相続書類を提出し、原則として口座は凍結され、相続人全員の同意または公証人の指示に基づき、以下のいずれかの手続に進みます:
口座の解約と残高の払戻し
相続人間での分配
公証人の預り金口座への送金
実務上は、最終的に口座解約手続につながることが一般的です。
3.生命保険の調査 ― FICOVIE
フランスでは生命保険(Assurance-vie)が広く利用されており、相続財産の中で重要な位置を占めることが少なくありません。
FICOVIEは一定額以上の生命保険契約を登録する制度で、契約者名、保険会社名、契約番号などが登録されています。受取人や正確な評価額は登録内容に含まれないため、照会後に保険会社へ個別に確認を行う必要があります。
生命保険は通常の相続財産とは異なる税務上の取扱いを受ける場合があり、契約内容によっては相続財産に直接組み込まれないケースもあります。そのため、調査は不可欠です。
4.実務上の重要性
フランス資産の特定は、単なる確認作業ではありません。その後の税務申告、名義変更、資金移動に直結します。
特に銀行口座については、死亡日時点の残高確定が相続税計算の基礎となり、その後の解約・払戻手続へと進みます。不動産については、名義変更手続が行われなければ将来的な売却が困難になります。
国際相続では、「後から判明する資産」が最大のリスクです。制度を理解したうえで初期段階から体系的に調査を行うことが、円滑な相続処理と税務コンプライアンスを確保する鍵となります。

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